共働き親の放置系中学受験

共働きでも中学受験は出来るのか長男に続き2回目の実験終了。大学合格者高校別ランキングも作ります

「高等教育費用の無償化」に、空気を読まずに反対してみる

「高等教育の無償化」を公約に掲げた自民党か衆議院で過半数を取り、実際どのような制度を作るのかが注目されています。

ちなみに「高等教育」というのは、世間的には大学、大学院の教育を意味するようです。


家に子供が3人いる私としては、無償化されればありがたいのは間違いなく、無償でいいならありがたくそうさせていただくと思います。

しかしそれでも個人的には、この「高等教育の無償化」が3つほどの理由であまり好きではありません。

これって社会的に公正なのだろうかと思ってしまうんですよね。

よろしければちょっと読んでみてもらえますか?


理由1:低所得階層から取り、高所得階層に与える逆再分配ではないか?

今、日本では大学進学率が半分位になっていて、大卒と高卒の間に位置する短大や高専は人数が少ないため、過半数が属する「普通の学歴」というものが存在しないと言えます(高齢者まで入れると、高卒の方が多くはなりますが)。

大学進学者と高卒者が大体半分づつという階層的に分断された状態ですね。

この状態で仮に税で高等教育の費用を賄うとすると、大学に行かない人には関係ない話ですから、半分を占める大学進学者のみが得をするということになります。

 

その税は、高卒者も負担しますから、見方を変えると高卒者から税を取り、これを大学進学者に与えているということになります。

仮にこの費用のために増税するんだというならば、

  • 大学進学者ー教育費用を間接的に受け取る&増税
  • 大学非進学者ー何も受け取れない&増税

となり、大学非進学者は今に比べて損をするだけです。

一方、損得がゼロサムであるとすれば大学進学者は得をするはずです。

 

確かに18歳から22歳の期間だけで考えれば、高卒就職者の方が、大学生のアルバイトより多少稼ぐとは思います。

しかし、生涯賃金で言えば、男性の場合高卒より大卒の方が平均すれば4000万円以上高くなりますから、これって生涯のスパンで考えれば、より貧しい階層からお金を取って、これをより豊かな階層に与えているということになりませんかね?

なぜ将来稼ぐようになる大学進学者を、相対的に稼ぎが少ない高卒者が支援することに合理性があるのでしょうか?


大多数の国民が薄い負担で、一部の将来有望なリーダー候補の若者を支援するのならわかるのですが、半分が半分の支援ということは、一人が一人を支援するマンツーマンディフェンス状態なわけですから負担がちょっと重いと思います

逆に、高校のようにほぼ全員が行くのであれば、生涯スパンでは負担も受益も全員ですから不公平ではなく支援を行うべきだと思いますが、半々の状態では不公正ではないかと思います。


理由2:そもそもこれ以上大卒を増やすべきだろうか?

この大学進学率50%と言う数字は、こんなデータ(下のグラフ)を示して先進国の中では低いと文科省は言っています。<リンク(文科省)>

このグラフを見ると確かにそうですが、実はこのデータは専門学校の扱いが国によって異なるらしいです。

日本の数字は専門学校が含まれませんが、大学と専門学校を区別していない国も多いようで、この数字では専門学校相当の学校が含まれている国も多いようです。

アメリカは2年制のコミカレも含まれていますし。


これとは別に、専門学校なども含んだ、高校を出た人が次の学校に入学する比率。で出したデータも実はありまして(下のグラフ)、これで見るとOECDで6番目と日本は高いです。

人口数千万人以上規模の国としては一番高い位。<リンク(OECD)>

「tertiary」というのはプライマリ、セカンダリの次で、「第3の」を示す英単語らしく、tertiary levelは高校の次の教育段階を示すようです。知らなかった。

 

更に、海外の大学は中退が多いので、卒業者率で見ると更に日本の順位は上がり3番目になります(下のグラフ)。

実は日本は高等教育を受けた人の比率が世界でもトップクラスに高い国なのです。

スウェーデンなどは働きながら通うパートタイム学生が多いので、中退率もまた高く、卒業者率で見るとこんなものです。文科省に騙されてはいけません。

 

OECD iLibrary | First-time graduation rates, by tertiary ISCED level (2013)

いやいや、他国との比較に関わらず、高等教育を受ける人間が多ければ多いほどいいんだという人的資本仮説的な話もあるかもしれませんが、忘れてはいけないのはフルタイムで高等教育を受けている間、その人は労働力にはなれないということです。

日本の就業者数は全部で6500万人ほど居ますが、大学生は280万人ほどいますから、大学進学により4%ほど就業者数を減らしているとも言えます。

人手不足の今、一面ではもったいないかも。

GDPで言えば20兆円位の押し下げ要因になっているかもしれません。

 

そもそも、大学で受けた教育が生産性向上につながる仕事が半分もあるのでしょうか?

また、大学で受けた教育が生産性向上につながる人は半分も居るのでしょうか?これは教育内容にもよりますが。

また、働くことで学ぶことは間違いなくありますから、大学での学びと、その間働くことを通じた学びの比較で、どちらが生産性を高めるのか?という視点も必要ではないかと思います。


理由3:本当に経済的に困っている子には無償化は関係ない。

色々な事情で経済的に一番困窮している子供は、高校出たら早く働いてお金を稼がなきゃと思っている層だと思います。

こういう最も困窮度が高い子供は、高等教育が無償化されたとしても教育を受けている場合じゃなくやはり働くと思うので、無償化されようが関係ありません。

で、その子が高校出て働いて、税金を払い、それが大学生の支援に使われるって社会福祉文脈で考えればおかしい気がします。


大学に行ける環境にあり、大学に行くための文化資本があり、大学に行ける知性がある層は社会の中で多くは半分より上の社会的強者です。

社会的強者である大学生は、支援される側でなく、少なくとも生涯スパンで半分より下を支援することが期待される層ではないかと思うのです。

 

それであれば、高等教育は受益者負担が正しく、大学卒業後により稼ぐために大学に行くのならば、現在のJASSO奨学金が取る低利での貸し付け方式が合理的であると思えます。本人が借りて払うならば親の負担はないわけで。

 

自民素案の出世払い方式も、受益者負担かつ学費が親の経済状況と切り離され、本人の支払いになる分世帯収入の影響を受けにくくなる点はいいのかなと思います。しかし、一定収入以下は支払い猶予の方式は反対。

年収250万以上から支払いにすれば、支払わなくていい年収249万で働きたい人が増えて、もっと稼ぎたい人の仕事を奪っていきます。配偶者控除もそうですが、安く働きたい人が増えることは、労働市場が歪ませて賃下げ圧力になりますよ。

また、所得捕捉のテクニカルな難しさもあります。

大阪は低所得世帯に対して私立高校の学費を支援しているらしいのですが、その所得基準に住民税額を使っているため、ふるさと納税しまくって住民税を減らすと、支援が受けられるなんて話を聞いたことがありますが本当なのかな?

法人作って自身への報酬を249万にするというのもありますし。

 

但し、広く薄い負担で一部の優秀者を支援することは間違っていないと思うので、東大がやっている親の年収400万以下は学費無料みたいなことはとてもいいことだと思っています。

また、本当に経済的に困っていても高等教育の元が十分取れそうな優秀な子供には、学費無料以上の支援を行うべきだとも思っています。