共働き親の放置系中学受験

共働きでも中学受験は出来るのか長男に続き2回目の実験終了。大学合格者高校別ランキングも作ります

東京の都立高校受験用に、中学内申点の甘辛度を地域別に推定してみた

一時は進学実績の凋落が著しかった東京の都立高校ですが、近年東大50人が普通になってきた日比谷を筆頭に、西、国立、戸山などの名門校も並の中高一貫以上の進学実績を挙げるまでに復活してきています。


これら東京の都立高校受験は、入学試験の点7:内申3のウエイトで評価されるので、入学試験が出来るだけでは足りず、中学校の内申点が高ければ有利になります。

特に音楽、美術、体育、技術家庭の実技4教科は換算点が倍になるため特に内申が重要で、実技4教科の内申点1は入試の点換算で6点以上の重さです。

日比谷高校などは内申オール5が普通!位の世界のようで劣等生だった私には無縁の世界で憧れます。共学で青春感あるし、知的キラキラ度が高い。

 

この内申点は、昔は1~5の比率が決められており相対評価で付いていたのですが、現在は絶対評価で付けられています。

以前の相対評価だと、受験して入ってくる学芸大附属中と一般の公立中でも1~5の比率は同じということにになってしまいますが、それおかしくない?という至極まっとうな疑問も出てきます。そんなこともあって絶対評価になったのてしょう。

相対評価では学年全員が頑張って同じように伸びたたとしても一人一人の評価は変わらないことになってしまいますし。

しかし、比率を気にせず生徒の一人一人の絶対的な出来で内申をつける絶対評価なら学校間の評価レベルを揃えられるかというと、統一テストでもしない限りまたそれはそれで怪しいですよね。

また、今では内申の基準も生徒の学力だけでなく「関心、意欲、態度」などの観点も加味して付けられています。

そもそも「関心、意欲、態度」など定量化しにくい項目を無理やり定量化して内申点にするというのも難しそうなのですが、そこは代理変数として提出物を期限内に提出しているかなどを使っているようですがまあ無理有りますよね。

そう考えると内申点に甘い辛いがあったりしないかとか、内申に有利な地域、学校があったりしないかとか思いませんか?

今回はその検証とまではいきませんが、判断材料をご提供できればと思っております。

 

実はこの東京の都立高校入試で使われる内申点ですが、東京都教育委員会が毎年中学3年生の内申点分布を発表しており、教科ごと、市区ごと、学校ごと(但し、番号になっており学校名は分からない)の分布を見ることができます。

都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年(平成30年12月31日現在)の評定状況の調査結果について|東京都教育委員会ホームページ

 

今回はこれの平成29年分のデータを使って(やりかけていたのを発見しただけで他意はない)、この内申点を分析してみようと思います。

都内公立中学校第3学年及び義務教育学校第9学年(平成28年12月31日現在)の評定状況の調査結果について|東京都教育委員会ホームページ

 

この内申分布ですが、今回は市区単位で見た場合にどんな傾向があるかに注目します。

指標としては、ハイエンド中学生向けに重要な「5が取れるか、取れないか」の参考にしていただくべく、全体に対する内申「5」の比率を中心に見ていきたいと思います。

 

まずは市区別の内申「5」比率です(百分比)。学校ごとの比率を地域で平均しています。

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合計9教科では、名門麹町中学校のある千代田区、第六中学校のある文京区が高くて全体の2割位が「5」になっているようです。

ここにデータは上げていませんが学校別にみると、千代田区は中学校が2校しかなく、高い方の一校は「5」が3割を超えています。ここが麹町中なのでしょうか。

一方、住んでる人の属性的に近そうな中央区は11%と結構低かったりします。

似たような人が住んでいそうな「国分寺市」と「国立市」ですが、国分寺は9教科で15%と上位ですが国立では9%台と最低の部類です。

 

この絶対評価の内申では、できる子が多く集まっていれば「5」比率は高くなり、そうでなければ低くなるはずで、単純に「5」比率が高ければ内申が甘い、低ければ辛いことを示すわけではありません。

とりわけ、主要五教科などは通塾率や勉強習慣の違いで差が出ても不思議はないのですが、美術、体育、技術家庭など実技4科目の出来に地域でこれほど差があるのかなと思います。技術家庭の塾なんて聞いたことないし。

 

次に、この気になる実技教科の科目別に「5」の割合を見てみましょうか。

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港区の技術家庭が18%が「5」なのに対し武蔵村山市は6%とか、千代田区の体育25%に対して日野市の体育5%とかはちょっと甘辛があるのではないかと感じるところもありますか?

実は体育に関しては「統一体力テスト」というものがありまして、統一基準で各市区の子供の体力や運動能力を計測した数字があります。

統一体力テスト報告書|東京都教育委員会ホームページ


これのH28年中3生の数字を千代田区と日野市で比べるとこうです。

左の「体力合計点」は体格と短距離走やソフトボール投げなど各種運動テストの合計スコアです。右の「総合評価A」はこのスコアを都全部で5つの層に分けたときの最上位層生徒が各地域で何%を占めるかという数字です。

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確かに東京都の平均よりも千代田区が上回り、日野市は下回るのですが、5段階最上位Aの比率が差の大きい男子で見ても千代田区13.8%、日野市8%なので、体育「5」の比率が25%と5%なのに比べればそこまでの差はありません。 やっぱり内申の付け方に甘辛あるのではという気がします。

ただ、内申の差はパフォーマンスではなく「関心、意欲、態度」の差です!と言われればそうですかというしかないのですが。

 

次は、生徒のデキに影響を与えるであろう要素をピックアップして、そこから推定される5の比率と、実際の5の比率の差を見てみるという分析をしてみようと思います。

使う要素はシンプル過ぎる気もしますが今回はこの3つで行きます。年度が少しずれるのはご容赦ください。

①各地域の大卒・大学院卒比率(平成22国勢調査)

親の学歴が高い方が教育熱心だという調査は良く見かけるので採用。出し方は、地域の最終学歴「大学・大学院卒」人口÷既卒者人口(最終学歴不詳含む)です。

②各地域の所得(平成24年納税者一人あたり課税対象所得)

塾や教材など学習への投下リソースを推しはかるために採用。

③各地域の私立、国立中学進学率(平成29年公立学校統計調査報告書)

「出来る子が中学受験すると、公立中は出がらしになりレベルが下がる説(出がらし説)」の検証も狙い採用。都外中学への進学者は私立進学(市川とか浅野とか洗足とか...)と想定して集計しています。

この3つの要素を地域ごとの特徴量とし、予測ターゲットを各地域の9科目「5」率として、重回帰分析という分析をやってみました。

結果出てきた式は

「5」率=大卒比率×11.8+課税対象所得×0.00122-国私立進学率×3.67+5.10

ということになりました。

「大卒比率」と「課税対象所得」は1%有意で身もふたもなく内申にプラスの影響。進学率は出がらし説通りマイナスの影響ですが、確率28%ほどで内申と関係ないかもという結果です。

予測の当てはまりの良さを示すR2値は0.77。この手の予想としてはシンプル過ぎる割にまあまあでしょうか。成績は結局金と親という結果が世知辛いですが。

 

このモデルで予測した各地区の数字と、実際の数字を比較したものが次の表です。

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「残差」となっているところが予測値と実際の値の差分で、これがプラスだと3要素がら予測される「5」比率よりも実際の「5」比率が高いことを示し、「評価が甘い」のかもしれません。反対にマイナスだと「評価が辛い」エリアかもしれません。

これで見ると「文京区」「稲城市」「国分寺市」「小平市」などが評価が甘い地域である可能性があります。孟母三遷をするならねらい目エリアかも。

反対に「中央区」「国立市」「日野市」「杉並区」などは評価が辛いのかもしれません。

 

今回こういう結果となりましたが、中学受験率に関連する要素の分析とか、運動能力の地域差分析とか、東京各市区のポジショニングとかやってみたいことがいろいろ出てきたのでたぶんそのうち続編やると思います。

長文お付き合い頂きありがとうございました!

最後にですが、地域別の大卒比率、所得、国私立中進学率をHTMLで貼っておきますので、いじってみたい方はお使いください。

  大卒・院卒比率 課税対象所得(千円) H29国私立中進学率
千代田区 36.7% 7843 38.3%
中央区 35.8% 5558 46.6%
港区 31.3% 9017 40.1%
新宿区 27.2% 4772 33.1%
文京区 35.6% 5441 44.7%
台東区 21.4% 3855 28.1%
墨田区 19.7% 3502 14.5%
江東区 25.7% 3892 24.6%
品川区 26.6% 4274 26.0%
目黒区 30.1% 5368 38.0%
大田区 24.7% 3951 22.9%
世田谷区 31.1% 5058 34.4%
渋谷区 29.3% 7027 34.0%
中野区 27.7% 3868 27.5%
杉並区 36.2% 4364 30.9%
豊島区 22.7% 4116 31.0%
北区 21.6% 3437 21.7%
荒川区 19.6% 3451 21.8%
板橋区 21.1% 3497 18.5%
練馬区 25.9% 3950 17.8%
足立区 13.8% 3242 12.4%
葛飾区 16.4% 3331 15.2%
江戸川区 17.5% 3463 12.1%
八王子市 22.8% 3467 8.0%
立川市 20.9% 3523 11.2%
武蔵野市 38.1% 4799 29.1%
三鷹市 29.1% 4136 17.8%
青梅市 15.1% 3152 6.7%
府中市 28.1% 3744 10.3%
昭島市 21.6% 3248 8.6%
調布市 30.3% 3906 21.2%
町田市 26.8% 3763 11.5%
小金井市 35.8% 4062 17.3%
小平市 28.6% 3759 10.4%
日野市 28.3% 3593 9.1%
東村山市 22.3% 3394 8.6%
国分寺市 35.2% 4151 14.5%
国立市 31.3% 4274 17.1%
福生市 16.5% 3077 9.0%
狛江市 30.1% 3666 16.6%
東大和市 20.5% 3319 6.5%
清瀬市 22.7% 3309 6.1%
東久留米市 25.6% 3465 7.6%
武蔵村山市 13.0% 3043 5.4%
多摩市 28.5% 3582 13.6%
稲城市 28.4% 3863 12.2%
羽村市 19.0% 3249 9.1%
あきる野市 15.3% 3131 5.1%
西東京市 27.0% 3738 15.0%